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03.25
Sun
なんてことはないお話。瑞垣さんが乙女!




 金曜の夜、近くのスーパーでいくらか割引された弁当を買ってから帰る。
 ついでに酒も。
 豪と暮らし始めて、交代で自炊するようになって数ヶ月。こんな出来合いの弁当を手に提げて帰るのは随分久しぶりのことだ。
 そして一人きりの夜も久しぶり。
 四月から担当部署が変わったという豪は、一昨日から出張で不在にしている。
 一人分の食事となるとやはり作るのが面倒で、まあ一日くらいならと最終日はもう手抜きすることに決めた。
 早々に弁当を食べて終えて、風呂に入って、酒を片手にネットをしたり借りてきたDVDをぼんやり流し見たりしていると、突如携帯の着信音が鳴り響いた。

 豪からだった。

「さっき飲み会終わって、まだ起きとるかなって」
「ふぅん、お疲れ。今は? ホテル?」
「はい、瑞垣さんは何してたんですか?」
「ん~? えっちなDVD見とったとこ」
「え」

 電話越しに息を呑むのがわかって、瑞垣は声に出して笑ってしまう。
 唖然とした表情など容易に想像できる。

「冗談や。DVDは見とるんはほんまやけど、普通に洋画な。なあ明日、帰ってくるの何時言うとったっけ?」
「あ、多分15時過ぎになるかと……」
「わかった。晩御飯、何か食いたいもんある?」
「いえ、特には。ただ、」

 豪はそこで一旦言葉を切って短く吐息し、それから言った。

「早く瑞垣さんに会いたいです」
「うん」
「触りたいし、抱きしめてキスしたい……初めはたった三日って思ってたのに、それがこんなにも寂しくなるなんて」
「そうやな。おれも夜はな、特に変な感じ。仕事中はそう変わらんのやけど、帰って、ご飯食べる時とか、寝る時とか。おかしいよな。もともとそうやって一人でおったのにな。なんやどんどんダメになっていく気がするな、おれ。けどいっか。豪ちゃんも同じなら」
「おれもです。安心しました」

 互いに笑いあって、それから瑞垣がぽつりと呟く。

「ああ、はよ明日にならんかな」
「それじゃ、そろそろ寝ますか?」
「ん……」

 何だか名残惜しい気もするが、眠ってしまえば時間はあっという間だ。
 空いた方の手でリモコンを取る。一時停止していたDVDとテレビを消して言う。

「明日、楽しみにしとくから。お土産」
「お土産ですか」
「もちろん豪ちゃんも!」
「おれはおまけですか」
「ふふ」
「いいですよ、おまけでも。瑞垣さんを思いきり幸せにしてあげられるおまけになりますから」
「もう既にいっぱい幸せにしてもらっとる。だからな、今度はおれも豪ちゃんを幸せにする番やから。明日は覚悟しとけよ!」
「え」
「おやすみ!」
「あ、ちょっと瑞垣さ……」

 ぶつりと通話終了のボタンを押して強制的に会話を断つと、立ち上がり、今日は誰もいない恋人の寝室に向かう。
 電気を消して、ベッドに入って、枕に顔を押しつける。
 豪の匂い。
 昨日も一昨日も、そうやって寂しさを紛らわせた。
 けれど明日はもうそんな必要もない。
 明日の朝、布団を干そう。シーツも洗って、それから買い物に行って、豪の好物を作って待っていよう。そうすれば、きっとあっという間だ。
 考えているうちに、眠りに落ちた。
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