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11.19
Sun

◆ハロウィン◆

「ごーうーちゃん!」

 語尾にハートマークでもついてそうな楽しそうな声で言われる。
 にっこりと満面の笑み。
 悪いことを考えている時の顔だ。
 させるものかと、いつもされるみたいに、開きかけた唇を人差し指の腹で押し止めてやる。
 今日はハロウィンで、つまりは例の、お決まりの言葉。

「お菓子をくれなきゃイひゃッ!?」

 言おうとしたところで、ぱくりと指を咥えられて変な声が飛び出してしまった。くちゅっといやらしい音を立てて、唇を離して。
 瑞垣さんは上目使いに、ニヤッと笑う。

「おれを出し抜こうやなんざ、10年早いで。豪ちゃん?」




◆冬の豪瑞◆

 微かな物音で目が覚めた。カーテンの向こうは、ほんのり暗い。まだ夜明け前かと思い、暖を求めて傍らに手を伸ばしてみるも、ほのかな熱が残っているだけだ。
 トイレかなと思って、再び瞼を閉じかけた時、響いてきた感嘆の声がそれを妨げた。続いて開いた扉から豪が冷気を纏って入ってくる。

「どないした?」
「あ、瑞垣さん。すみません起こしてもうて」
「いや、それよりなんかあったんと違うんか?」
「え、あ、いや、なんか雪がすごくて……」

 豪は照れたように後ろ頭を掻いた。
 瑞垣がくすくすと笑いながら、布団を持ち上げる。

「なんや、雪なんざ珍しくもねえじゃろ。それよかほら、いつまでもそんなとこおったら寒いやろ。はよ入れ。って、うわっ冷てぇ!」

 促されるまま、身体を滑り込ませた豪の身体に腕を回し、瑞垣は大きく身を震わせた。
 そういえば今日はこの冬一番の冷え込みだとか、昨日の天気予報で言っていたのを思い出す。

「すみません、けど瑞垣さんあったかいです……」
「ええやろ、天然カイロや」

 抱き締める腕に力を込めて、瑞垣はイタズラっぽい笑みを浮かべる。

「なんなら、もっと熱くしてやろうか?」
「ええ! あ、朝からそんな……」

 するりと足を絡ませ、腰を押し付けてやれば、豪は今度は慌ててみせた。

「ふふ、冗談や冗談」

 そんな一向に変わらない反応ですら愛しくて、瑞垣は豪の胸に頬を擦り付ける。
 豪は真っ赤になって唇を尖らせた。

「からかわんでください。本気にしてもうたやないですか」
「そぉか? 冗談のつもりやったけど、豪ちゃんが期待したって言うんなら、おれ別にやってもええぞ?」
「……言いましたね?」
「お、ノるか?」
「瑞垣さんが煽ってきたんですよ? 据え膳食わぬは~でしょう?」

 ぐいっと両肩を掴まれて、ベッドに背中を押し付けられた瑞垣は吐息のような笑い声を漏らす。

「図太うなりやがって、けどそんな豪ちゃんも、んっ……」

 これ以上の軽口は許さないとばかりに唇を塞がれる。強引で激しい口付けは、徐々に身体を温めていく。
 寝間着の下を這う指の熱を心地よく感じながら、瑞垣は自らも豪の首に腕を回したのだった。
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