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07.10
Mon
ただ平和なだけのお気楽SS。やまもおちもいみもありません。タイトルからしてひどい。



「これ、風呂に浮かべるやつやないですか」

 つぶらな黒の瞳につき出した愛らしい嘴、それから滑らかなプラスチックのボディは鮮やかな黄色。
 小さなそれが12体、ベッドの枕元に並んでいる。仕事から帰り風呂と夕飯を済ませて、さあ寝ようかと寝室に入った豪はドアを開けるなり固まった。

「そうそう、懐かしいやろアヒル隊長。やっぱ子どもの頃持ってた? 豪ちゃん」
「湯船に浮いてましたね」
「新しいシャンプーのボトルをな、買いにいったら、風呂コーナーんとこにこれが置いてあったんや。それで懐かしくなって買ってもうた」

 豪は口をへの字に曲げて、短く息を吐いた。

「何でベッドに飾っとるんですか?」
「風呂に浮かべて遊ぶ年でもねぇやろ?」
「だからって……」
「まあええやないか、ほら今日もやるんやろ?」

 瑞垣は飛び付くようにして豪を押し倒すと、その唇に唇を重ね合わせる。唇の間から舌が割り込まれると、豪もすっかりその気になって、ベッドを転がり瑞垣の上に覆い被さった。唇を味わいつつ、ズボンの中に手を入れると、瑞垣はくすぐったそうに笑って身を捩る。

「待て待て、なあ、待てって。脱いでからしたい」

 代えのパジャマくらいはあるが、確かに汚すと面倒だ。
 豪がそんなことを考えた時、瑞垣が言った。

「豪ちゃんと肌合わせるの、気持ちよくて好きなんや」

 豪の豪が一気に元気になった。
 早々に着ているものを全て脱ぎ落とし、お互い一糸纏わぬ姿になる。さて続きとばかりに瑞垣に被さった豪は、しかしそこで唐突に動きを止めた。
 視界の端に映るのは、横一列に整列したそれ。
 見つめてくる、無垢そうな24の瞳。

「…………」

 なんとなく落ち着かない。
 瑞垣がきょとんとして見上げてくる。

「豪ちゃん?」
「あ、いや……」

 とりあえず、そこに放ったパジャマをアヒルの上に被せておいた。

***

 勢いとノリのままに三連続でやらかした豪は、流石に疲れきったらしく、瑞垣の隣にぐったりと身を沈めた。瑞垣もまた疲労困憊した様子で、それでも満足そうな笑みを浮かべている。

「風呂、もうええか。いいですよね?」

 眠そうな声の豪に、瑞垣は首を伸ばして頬に口づけ、それから言った。

「ん、明日の朝シャワー浴びよ。おやすみ豪ちゃん」
「おやすみなさい」

 目を閉じた豪は、すぐに静かな寝息を立て始める。瑞垣はそんな穏やかな寝顔を嬉しげに見つめていたが、ふと思い立ったように枕元のアヒルの人形を一つ手に取った。そうして眠る豪の剥き出しの腹に置く。そのあともくすくす笑いながら、二つ三つと乗せていくが、ふとその手を止めた。んーっと下唇を突き出し首を捻る。
 それで結局元の場所に戻したかと思うと、

「やっぱりここは、おれの特等席!」

 柔らかい腹に顔を埋めたのだった。
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