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05.01
Mon
白さんから頂いたカドミズお題「魚」
食べ方が汚い秀吾ちゃん。うちの門脇は基本アホです。かっこいい門脇はいません。






 秀吾は昔から魚が苦手だ。
 嫌いなわけではない。綺麗に食べられないというのが苦手とする理由だ。つまり刺身はいいが、問題なのは煮魚や焼き魚だ。
 俊二からも、食べ方が汚いと昔からよく叱られた。それは今でも変わらず、おまえ外で魚食うなよとまで言われる始末だ。

「魚に骨なんかなかったらええのに……」

 夕食を前に秀吾が情けない声を出す。手元の皿には、ほっけの切り身が乗っていて先ほどから全く手がつけられていない。
 正面に座る俊二が険しい眼差しを向けてくる。

「そんならおまえはタコとかイカとかナマコとか食うとけ、と言いたいとこやけどな秀吾。おまえプロ入り決まったんやろ、それでそのうち万一にでもバラエティじゃなんじゃとテレビ出演するようなことがあって、魚食べなおえんような事態になったらどないする。恥やぞ」
「けど俊。芸能人でもあるまいし、食わず嫌いのアレでもない限り、そんな食レポとかないやろ」
「今やスポーツ選手も芸能人みたいなもんや。そうでなくても食事会とかあるやろ。ぐだぐだ言っとらんでええから、さっさと食え。そのために食べやすいの用意したったんやろうが」

 確かにほっけは小骨も少ないし食べやすい方だとは思う。しかしそれを上手く食べられないのが門脇秀吾だ。こと野球以外に関しては、とかく不器用だった。
 秀吾は俊二の前に置かれた皿を、ちらりと見やる。残されているのは皮と骨のみだ。

「どないしたらそんな綺麗に食えるんや」
「言うとるやろ、骨をしゃぶれって」
「同じしゃぶるんなら俊のがええ」
「アホか! セクハラで訴えるぞ!」

 唇を尖らせて言えば、結構強い力で頭をはたかれた。
 はたかれたところを擦りながら、秀吾はぶちぶち溢す。

「男同士でセクハラもないやろ」
「セクハラってのは同性同士でも成立するもんやからな、知らんのか」
「けどおれと俊は恋人同士やろ?」
「誰がそんなこと決めた。ただの同居人が調子のんな!」
「………けどご褒美なしじゃやる気でんもん」

 俊二が素直でないことは、長年の付き合いのなかで重々承知している。けれど、秀吾はついいじけたような口調になる。
 俊二は頭をがりがり掻いて言う。

「あーはいはいわかった、わかりました! おまえって本っ当ガキやな! そんなら、それ全部綺麗に食べられたら、好きなだけおれのしゃぶらせたる! ただしちょっとでもみっともない食い方してみい、その時点で不合格やからな!」

 びしっと人差し指を突きつけて宣言した俊二は即座に後悔した。指の先で驚いたの表情の秀吾の目が一瞬の後、きらきらと輝き始めたからだ。

「約束やぞ、俊……!」
「え、ちょ」

 目の前に餌を下げたからって、この男の不器用がそんな容易に改善されるわけはない。ないとは思っているが、

 ここで秀吾は予想外の行動に出た。

「おい待てしゅー……!」

 制止の声も聞かずに、秀吾はほっけの切り身を丸ごと口の中へ放り込んだ。
 唖然とする俊二の前で、秀吾はバリボリと音を立てながら骨を噛み砕き飲み下す。途中、僅かに顔をしかめたのは、喉に引っ掛かりでもしたのだろう。当たり前だ。それでも口の中のもの全てをどうにか胃に収め、秀吾はどうだとばかりに俊二を見据える。

「俊、これで文句ないやろ!」

 ガッツポーズでもしそうな調子で言い放ち、肩をそびやかす。
 俊二は静かに瞼を落とすと、息だけで笑った。

「誰が……」
「ん?」

 ぼそりと呟かれた声に、秀吾が小首を傾げる。
 その耳を遠慮なく引っ張ると、俊二は力の限り叫んだ。

「誰が丸ごと食え言うた、この野生児――――――ッ!!!」
「えええだって皿綺麗やろ!? ぐちゃぐちゃんなってねぇやろ!?」
「不合格じゃ不合格、こんなもん綺麗に食べたとは言わん!!」
「せやかて俊!!」
「せやかてもくそもあるか! ワイルドとかそういう問題ちがうからな、あーもう本当おまえなんでそんなアホなんや!!」
「し、俊、約束は…………!」
「おあずけに決まっとるやろ」

 すがるように言った秀吾を、頭を抱え嘆くように天を仰いでいた俊二がじろりと睨みつけた。
 そうして、ふっと薄暗い笑みを浮かべた。

「そんなことよりも行儀作法からしっかりしつけたる。覚悟せえよ、秀吾ちゃん」
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