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02.13
Mon
前に書こうとして没った城瑞。勿体ないから晒す。


 そんな話題になったきっかけは何だったのか、はっきり覚えてはいないが、その日は瑞垣と二人で飲んでいて、どちらもいい感じに酔った状態で、瑞垣が言った。
 大衆居酒屋のカウンターで二人で並んで座っていた。

「で、おまえは誰かええ人おらんのか?」

 中身の少なくなったコップを揺らしつつ、からかいように問うてくる声。
 城野は苦い笑みを零しながら言う。

「残念ながら」
「ふぅん、勿体ねぇな。おまえみたいな優良物件。あ、それともあれか、そう言うときながら実はこっそり誰かと付き合ってたり。ん? どうなんや? 今のうち正直に話す方が賢明やぞ。城野」
「いませんよ、本当に。周りで、そういう話ちょくちょく聞きますけど」
「じゃ、気になる子とかは?」

 やけに絡んでくるのは酒が入っているせいだろうか。
 肘をつき、手に持ったコップを唇に押し当て、横目に見上げてくる。目元が赤くて、唇が濡れていた。身体を動かした拍子に、卓の下で膝がぶつかった。
 心臓が跳ねる。
 不自然にならないよう、そっと自分の手元に視線を戻す。

「いません」
「ふん?」

 動転する自身をごまかすように酒に口を付ける。
 瑞垣は眉を上げて、短く息を吐きだした。

「ほんなら、おれらで付き合うか?」
「え?」

 注文を告げる声と、調理の音、酔客の屈託ない笑い声が、店内に溢れていた。
 だから初めは聞き間違いかと思って、振り向いた城野は無意識に聞き返していた。
 瑞垣は城野の耳を摘まんで引っ張ると唇を寄せて、今度は、はっきりとした声で言った。

「独り身の寂しいもの同士お付き合いしましょ、って言ってんの。あ、ていうかお付き合いの意味わかる? オトモダチとかそういうんじゃなくていわゆる男女の付き合いってやつよ? デートしたり、することしたり、することしたり、することしたり」

 放心する城野をよそに瑞垣は一人喋り続ける。
 城野の頭の中は混乱の極みにあった。
 お付き合い。
 男女の。
 考えるだけで目眩がした。
 きっとこれは悪い冗談だ。
 だっていくらなんでも、そんな

「城野」

 呼ばれて我に返る。
 瑞垣が微笑んでいた。
 胡乱な眼差しに、はっとする。

「瑞垣さん、そろそろ帰りましょう」
「なんでや。9時にもなってないやないか。まだええやろ」
「だって瑞垣さん酔ってるでしょう?」
「そりゃ多少はな。城野」

 熱のある空気の中、冷めた瑞垣の声が静かに告げる。

「おれは別に酔っ払って、わけもわからん状態で、こういうこと言うてるわけやないぞ。嫌なら別に酒の席での戯言と聞き流してもろても構わんけど……まあせやな、こんな場所でする話やなかった」
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