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12.20
Tue
白さんから頂いたお誕生部プレゼント豪瑞!
テンションだだあがりでした(笑)ありがとうございました!





「豪ちゃん、あーんして―」
「瑞垣さん、さすがに無理です…人前で何か…」
「気にすんなや。ほれ。腕が痛い」
「……」
 何を言っても無駄だと思うとしぶしぶのていで豪は口を開いた。その口にアツアツのから揚げが押し込まれる。噛みしめるとやけどしそうなほど熱い肉汁があふれてきたが思い切ってがつがつと咀嚼する。
「うまいやろ?」
 しっかり噛んで飲み込んだ後、豪は頷いた。
「おいしいです」
「そうか。よかった」
 そう言ってう笑うと瑞垣は注文していたトマトジュースのストローを咥える。
「それだけでいいんですか?」
「あー、うん。ちょっと食欲ないんでな」
 若干白い顔色とダルそうな瑞垣の症状の正体は知っている。
「未成年が飲んじゃだめですよ」
「あらま、豪ちゃんってばそんなことまでお見通しやの?」
「一応医者の息子なんでそれくらいは」
「ええとこの坊ちゃんやなあ。一回遊びに行ってええ?」
「悪いことしないなら」
 瑞垣は苦笑してそのまま飲み干したトマトジュースを置く。
「それで、これからどうするんですか?」
 横手駅で待ち合わせして、先にご飯を食べて。後は予定がない。
「ん~、うち来る?」
「え。いいんですか?」
「今日は家族おらへんし。夕方までやけどな。だらだら一緒におるだけや」
「しょうがないですよね、おれもお金あんまりないし。昼飯だけでもうお金すっからかんですもん」
 16歳と14歳。
 瑞垣の高校はバイト禁止で、中学生で部活もしている豪もバイトなどする余裕はない。
 告白してきたのは瑞垣の方からだった。まるで冗談かのように好きやと言ってきたのだ。
 巧と喧嘩をしていたばかりで、少しイライラしていたのもあるが、あてつけのつもりでOKしたつもりだった。
「おれも瑞垣さんが好きですよ」
 ふわっと笑う瑞垣に、初めて自覚した。
 それからだ、奇妙な付き合いが始まったのは。
 男が好きだという感覚ではなくて、瑞垣だから好きだという感覚だった。
 愛情未満、友達以上。
 ただただ一緒にいて、勉強したり、話をしたりするだけのお遊びのような付き合いだったが同い年の女子と一緒に遊ぶような甘酸っぱいような、気疲れするような感じでもない。
 男友達の延長。
 もちろん体の関係があるわけでもない。
 冗談だったと思い込み始めた矢先だった。
「昨日は誰と飲んだんですか?」
「中学時代の悪友どもと」
 すたすた歩きなれた道を行く瑞垣の後を追う。ついでに尋ねてみた。
「仲がいいんですね」
「せやなー、まあ悪さに付き合うのって仲がええって証拠やなぁ」
「今度はおれも誘ってくださいよ」
「あほ。お前みたいなねんねに酒やか十年早いわ。お前と飲むんやったら成人してからな」
「そうですか」
 少し残念に思う。結局一歩近付けてくれないのだ。
「瑞垣さんは結局おれとどうなりたいんですか?」
 近道と言う路地裏を通ってるうちに、つい言ってしまった。
「ただの友達ですよね。……好きって、言ったのは結局どういう意味だったんですか?」
「豪ちゃん、ちょっと待てって。人がおらん言うても一般道や。意外にせっかちやな」
 軽くかわされて豪は唇を噛んだ。


 瑞垣の部屋に通されて所在なさげに見渡す。
ベッドと、机と本棚。壁にはちゃぶ台が立てかけられている。
「おまたせ」
 あさってきたのかジュースやお菓子を両腕いっぱいに抱えてくる。足で行儀悪くドアを蹴って開けた瑞垣からいくつかものを受けとる。
「香夏のおやつやけど後で謝っとくわ」
「ああ、なんかやっぱり買っとくべきでしたね」
「まあな、そこのちゃぶ台出してくれるか?」
「あ、はい」
 小さなちゃぶ台をくみ上げて部屋の真ん中に置くとその上に袋菓子をどさっと置く。
「なんでも開けてええで」
「怒られる時は一緒に怒られますから」
 豪の心遣いに笑顔を浮かべながら瑞垣はチョコ菓子の箱を開ける。ふわっと甘い匂いが鼻孔をくすぐる。
「ジュースでよかったか?」
「はい」
 コップにどぱどぱと注いで渡されると豪はいただきますと呟いて飲む。炭酸が喉をやいた。
「答え、もう聞いてもいいですか?」
「忘れてなかったか」
 ぺろりと小さく舌を出した瑞垣は肩を竦める。
「質問に質問で返して悪いけどな、……豪ちゃんがおれを好きってどういう意味?」
「それは……その、先輩として尊敬……」
「それだけか?」
 食い入るように見つめられて豪は息を飲む。 見透かすような目。取り繕っても無駄だ。ここは正直に言った方がいい。
「好きですよ。その、異性に対する好きと一緒の感覚だと思います……すみません」
「ははっ、なんで謝るんや。安心した」
 瑞垣は屈託なく笑う。
「おれも、好きや。豪ちゃん。先に聞いて悪かった。おれも狡い奴やなぁ。ちょっと怖かったんや」
 この人でも怯えを見せるのだと思うと急に愛しさのようなものが込み上げてきて豪は笑った。
「やっと両思い、ですか?」
「かもな。なぁ豪ちゃん」
「はい」
「ちゅー、してみようや」
 突然の言葉に思わず口にしていたジュースを吹きかけた。咳き込んだ豪にティッシュを渡してくる瑞垣は楽しそうに笑っている。
「いややったら、すぐ言えよ?」
 ぎゅっと目を閉じる豪の唇に微かな息が当たる。それから柔らかい感触。これがキスなのかとぼんやりと考える。
 一瞬当たっただけですぐに温もりが去り、唇は冷たい空気に触れている。
「どうやった?」
 くすっと笑う声に豪は目を開ける。思っていたより間近にあった瑞垣の顔をまじまじと見つめる。
 それをどうとったのか、瑞垣は苦笑する。
「大丈夫、もうせん」
 どうやら否定としてとったらしい。遠ざかろうとした瑞垣の腕を慌ててとらえる。
「いやじゃ、なかったです」
 慌てて言うと瑞垣はきょとんとした顔をしてにやりと笑う。
「可愛いなぁ、なぁ、今度はお前さんからして?」
 挑発的な囁きに豪は息を飲む。
 まぶたが閉じられて、薄い唇か誘うように少しだけ尖る。
 そっと、唇を近づけて先ほどのように軽く口付てみる。柔らかさをもっと味わいたくなり手をそっと瑞垣の頭に手を寄せる。
「ん」
 唇を合わせただけでは物足りない。息苦しそうに薄く開いた唇。豪の唇に瑞垣の歯が当たる。もう少し、熱を感じたい。本能の赴くままに舌を唇に這わせてみた。ゆっくりと歯列を割ると、舌が迎え入れられる。
 縋りついてきた指が背中に回る。
 唾液が絡み合い、小さく漏れる声。卑猥な水音が静かな部屋に鳴る。頭に回していた腕を肩において軽く体重をかければ瑞垣は素直に床に倒れる。覆いかぶさり口内を存分に弄る。
「ごぉ……っ……」
 顔を赤らめ瑞垣が息苦しそうに悶える。
 少し顔を離してみれば唾液が二人の間につながる。
「瑞垣さん、好きです」
「……おれも、や」
 もう一度唇を近づけかけた時だった。
「お兄ちゃん! うちのチョコ食べたやろ!」
 どすどすと足音が近付いてくるのに豪は正気に戻り、慌てて瑞垣の上から離れる。いつの間にか帰ってきたのか香夏だ。
「また、続きは今度な」
 起き上がって瑞垣は乱れた胸元を直す。
「あほ兄……! あ」
「あ、おじゃま、してます……」
 突然開いたドアの向こうには鬼のような形相の香夏がいて、豪がいることに気付いたと同時に顔を赤くして慌てて閉めた。
「ノックして返事があってから開けろって言うたやろ」
 バタバタと遠ざかっていく足音に瑞垣は笑う。
 もうしばらくは上がってこないと確信した上で、もう一回、キスだけとねだって豪は瑞垣の唇をむさぼった。
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