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12.18
Sun
ほもじゃないけど微妙に怪しい?というか一臣さんが軽く変態臭い。



 弟がかわいいのなんて、小学生低学年、いや小学校入学前までの話だ。
 呼び方ひとつみてもわかる。かずくんが兄ちゃんになって、そのあとは「おい」とか「なあ」とかそんな感じで、最終的には名前を呼び捨てだ。
 今では呼ばれること自体殆どない。
 まず口を利くことがない。
 たまに実家に帰っても、「ああ、おったんか」みたいな目で見てくるだけだ。
 年末帰った時なんか、

「今年受験やろ、どこいくか決めたんか」

 と聞いたら

「お気遣いどうも、けどお兄さまのご心配には及びませーん。進路については分相応に考えておりますー」

 と言って舌を出していた。
 全く可愛いげがない。
 昔は良かった。
 それこそまだ舌ったらずな頃。弟の場合、同年代の子どもと比べればそれは口達者ではあったが、今ほどではなかったし、それにそう。兄であるこの自分を頼ってきたりなんてこともあった。
 あの弟が、俊二がだ。
 あれは確かそう、遊びに出かけた俊二がなかなか帰ってこないっていうので近所の公園に探しに行った時のことだ。陽も大分沈んで、もう暗くなりかけてるというのに、俊二のやつときたら赤ん坊の頃からの付き合いである幼馴染とまだ夢中になって遊んでいて、帰るぞと声をかけると駄々をこねた。「お母さんがかんかんに怒っとるからご飯抜きにされるぞ」と脅しをかけても、「秀吾ちゃんのところで食べさせてもらうからええもん」と平然と返してきやがる。
 なのでちょっと脅すつもりで、一臣は言ってやった。

「このあたりはな、夜になったら鬼がでるんじゃぞ。おまえなんかあっという間に攫われてまうんじゃぞ」
「鬼なんかおらんもん」

 俊二は僅かに怯えを見せながらも、気丈に言い返してくる。
 隣で秀吾が俊二の手を握って、ごくりと唾を飲みこんだ。

「なんでそんなことが言いきれるんや。おらんっちゅう証拠なんかないやろ」
「おるっていう証拠かてないやんか。かずくんだって、見たことないくせに」
「知らんのか? 鬼は普段人の姿をしとるんじゃぞ。人間に紛れて暮らしとるんじゃと。ほら見ぃ、もう日が暮れてまう、知らんぞ。鬼は小さい子どもの柔らかい肉が好物やからな。こうやって」

 繋がれていない方の手を取り、逃げようとするのを引き寄せてやる。
 ちょうど手前にある小指に歯を立ててやると、驚きに目を見開いて、大きく身を竦ませる。

「生きたまま、骨ごとばりばり食われてまうんやからな」

 じわりと目尻に涙が浮くのを見て、手を離してやる。

「ほんならおれは先に帰るからな。二人とも気つけて帰るんやぞ」

 踵を返して歩き出す。すぐに背中に重い衝撃があって、振り返ると二人がしがみついていた。
 すっかり怯えてしまった秀吾を家に送り届けてから、俊二を連れ帰った。
 家に帰りつくまで、俊二は一臣の手を強く握りしめて離さなかった。
 よほど怖かったのか、俊二は家の中であっても夜になると一人でトイレに行けなくなってしまった。
 夜中に起こされると腹は立ったが、元は自分の作り話のせいなので文句もあまり言えなかった。
 それでも、今から思えば随分とかわいらしいものである。
 そんなことを考えていると俊二がマグカップを手に台所へ入ってきた。

「なに、なんか用か?」

 視線に気が付いた俊二が嫌そうにしかめた顔を振り向かせる。
 舌打ちでも聞こえてきそうだ。

「別に、昔はもっとかわいかったのになって思っとっただけや」
「はぁ?」

 俊二はますます不可解な表情になって、顎を落とした。
 マグカップから水があふれている。
 気づいてないらしい俊二に代わり、横から手を伸ばして水を止める。

「おい、岡山の水は貴重なんじゃぞ。もったいないことすんなや」
「おまえがおかしなこと言うからじゃろうが」
「なあ、覚えとるか?」
「何を」

 眉をひそめる俊二の空いた右手を掴んで、一臣は昔そうしたように小指に歯を立ててやった。
 俊二はぎょっとすると、慌てて手を引っ込める。

「ちょ、きしょくわるッ!! 何考えとるんじゃ! 変態か!」

 怒ったように言って、俊二は台所から出て行ってしまう。
 その背に深々と息を吐き出して一臣はひとり呟いた。

「昔はあんなに可愛かったのに」
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