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10.22
Sat
バッテリーのコピペbotであった

原田:ちなみに俺が知ってる痴漢撲滅エピソードでは、目の前の立ってる女の人が痴漢されてるのに気付いて「どうぞ~」と席を譲ったあとに「どうぞ!」と痴漢に尻を突き出した吉貞に勝てた奴はまだ居ない

これが最高だったので、吉瑞でSS書いてみた。
小学生瑞垣が痴漢にあっているのを救うヒーロー吉貞です。







 夕暮れ時。
 帰宅ラッシュに混みあう駅のホーム。乗車口に並び、やかましく騒ぐ少年が二人。
 何がどうなったのか、よくわからないうちに付き合うとか、そういう関係になっていた瑞垣俊二と吉貞信弘である。

「お前ほんま可愛げないやつじゃな! ちったぁうちの可愛い後輩見習ったらどうや」
「またまたそんなこと言って、わかってるんッスよ。瑞垣先輩はおれのこと可愛いんやのうて、かっこええ思ってくれてるんですよね!」
「アホか! 一回脳味噌どっかで取り替えて来い!」
「ほら電車来ますし、迷惑ですよ瑞垣先輩。お口にチャックしてくださーい」

 ふざけた物言いではあるが尤もな意見に瑞垣は苦虫を噛み潰したような顔になって口を閉じる。
 アナウンスが流れて、電車が滑り込んでくる。
 ドアが開いて、多くの人が降りていき、多くの人が乗り込んでいく。田舎暮らし故に滅多に遭遇することのない鮨詰め状態に二人は目を丸くする。

「これが毎日とかやってらんねぇよな……」
「しかも朝と夕方の二回やで」

 うんざりした声で言って、肩を竦めた瑞垣は急に腕を引かれて抵抗する間もなく奥の壁際に押し込まれる。気づけば吉貞との位置が入れ替わっていて、得意気な笑顔が目の前にあった。

「どうですか、できる男でしょ、おれ。理想の彼氏ナンバーワンって感じ?」
「自惚れええとこやな、なんやこういうのもお前がするとスマートじゃねぇんだよな」

 瑞垣は半眼になって冷めた視線を送るが吉貞はさらりと受け流す。

「え、そういうとこがまた好きだって? やだ、瑞垣先輩ってばこんな公衆の面前で!」
「もうええわ、それで……」

 どこかで意図的に止めなければまたもヒートアップしそうだ。
 瑞垣はひとつ息を吐き出して、背中を壁に預ける。
 この小生意気な年下の少年のドヤ顔は癪に触るが、場所を変わってもらえたことは実際ありがたかった。


 昔こんな風に混雑した車内で痴漢にあった身としては。



 あれは確か、今から四年前。あの頃はまだ小学生で、バスに乗っていた時だった。
 田舎で本数の少ないバスの車内は時間帯によっては多くの乗客で埋まることがある。
 座席の背についた持ち手に捕まって、時折大きな揺れに耐えながら、窓の景色をなんとなしに眺めていた俊二は突然尻に感じた違和感に大きく身を震わせた。
 鞄が当たっているとか、狭い車内でやむなく密着する身体とか、そんなものではない。
 明らかに意図的に動く五本の指。
 ウソだろと胸の内で叫ぶ。
 声が出ない。
 怖い。
 右も左も人で塞がれている通路に逃げ場はない。
 何とか言わなければ。
 せめて振り払わなければとは思うが、身体は震えるばかりで思うようにならない。
 ただ掴んでいた持ち手に縋り付くようにして俊二は唇を噛みしめた。
 恐ろしさと悔しさで、泣きたくもないのに涙で視界が滲む。
 俊二が抵抗しないのをいいことに、尻を撫でまわしていた手がズボンの内側にまで入ってこようとする。
 嫌だ。やめろ。
 叫びたかったが、やはり声にならなかった。
 不意に、
 俊二の前にある席に座っていた男の子が振り向き目が合った。
 男の子は目をぱちくりさせて。

「どーぞ!」

 言って、立ち上がり俊二の手を引いた。
 見目に反して意外なほど強い力で引かれた俊二はあっと思う間もなく痴漢の手を離れる。
 男の子は俊二を席に押し込むと、自分はその脇に立つ。さっきまで俊二がいた場所だ。

「ノブ! 席を譲るのはいいけど乱暴にしたらいけん。ごめんね、僕。大丈夫やった?」
「あ……」

 呆然とする俊二に母親らしき女性が隣から声をかけてきた。
 そんな母親の叱責も素知らぬ顔で、男の子は背後をちらりと見上げる。
 真後ろに立っていた中年の男がぎくりとし、男の子は自分の尻を差し出して言う。

「どうぞ」





 ある地点を過ぎると、人の数は大幅に減る。
 ガラガラになった車内で空いた座席に二人で腰かけた。

「何考えてんッスか?」

 すっかり日が暮れて真っ暗な景色をぼんやり眺める瑞垣に吉貞が問いかける。
 瑞垣はちらりと隣を一瞥すると視線を窓の外に戻した。

「初恋の人のこと」
「えっ……」

 吉貞は一瞬固まって、それから言った。

「それって門脇さんですか!?」
「なんでそうなるんじゃ!」
「いやだって……じゃ、おれですか?」
「だからなんでそうなるんじゃ!!」

 声を荒げて立ち上がる瑞垣に吉貞も後に続く。

「ちょっとどこ行くんですか、横手はまだ先ですよ!」
「ついてくんな! 車両変えるだけじゃ!」
「え~冷たい! おれ達恋人同士なのに!」
「言うな! 寒気がする!」

 顔も覚えていない男の子はその後、母親と共に新田のどこかのバス停で降りていったことだけは覚えている。
 お礼もまともに言えなかった。
 それが今でも心残りだ。

「先輩があんまり冷たいとノブくん泣いちゃいますよ~」

 追いかけてくる声にふと気づく。
 そういやこいつの名前って………

 まさかな。
 だってあの男の子はもっとかっこよかった。

 そう思い直して、瑞垣は再び美しい思い出を心の中にしまっておくことにした。
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