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10.14
Fri

 ここ数日、瑞垣はよくないことが続いていた。
 5日前、古典の小テストで凡ミスをし満点を取り損ねた。同日、お気に入りのCDを落として割った。
 4日前、香夏が海音寺と電話しているのを見かけた。香夏がきらきらした顔をしていて、ムカついた。
 3日前、何もないところで躓いたり、階段を踏み外しそうになったりした。おまけに学校から帰る途中、見知らぬ犬に吠えられて驚き自転車から落ちた。足首を捻った。
 そして昨日、携帯を水没させた。

「俊」

 遠くからの呼び声を瑞垣は無視した。
 不運続きに苛立っていた。

「俊!」

 さっきよりも強く名前を呼ばれ、背後から追いかけてくる気配があった。
 近付いてくる足音。

「俊、今帰りか? 今日はコーチの日か?」
「ねぇよ」

 感情がそのまま声に出る。
 門脇は隣に並んで歩きながら、顔を覗き込んでくる。

「何を怒っとるんじゃ?」

 触らぬ神に祟りなしという言葉を知らないのだろうか、コイツは。知らないんだろうな、馬鹿だから。

「おれ、なんかしたか?」

 返答するのも面倒臭くて、瑞垣は無言で足を進める。
 瑞垣は先日捻った右足を擦るように歩いている。
 門脇は挫けず質問を重ねた。

「てか、足どうした?」

 今更かよ。

「なあ俊」

 …………。

「俊」
「あーもううるっせぇ!」

 瑞垣は叫んで、相手の胸ぐらをぐいっと掴んだ。
 咄嗟に身構えた門脇の、唇に唇を押し付ける。
 そうして呆気にとられて間抜けな顔になる門脇を突き放す。
 一瞬間があって、門脇がぼけっと言う。

「なんじゃ、溜まっとったんか」
「ちげぇよ! アホか!」

 瑞垣は思いきり怒鳴るが、門脇は困ったように頭をかくばかりだ。
 舌打ちが出る。

「最近ツイてなかったからな。悪運を移してやろうか思っただけや」

 素っ気なく言って、瑞垣はさっさと歩き出す。
 その背後を、門脇は犬のようについて来る。

「なんだ、そんなことか。ええぞ。もっと移してくれても」

 にこにこと、でかい図体に似つかわしくないかわいい笑みを浮かべる門脇に、瑞垣は再び怒声を浴びせた。

「嬉しそうにすんじゃねぇ! ばか!」
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