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10.14
Fri
背中の蝶の痣と豪瑞




 瑞垣の背中には蝶がいる。
 左肩甲骨のすぐ横。外側に、羽を広げた蝶を思わせる形のアザ。

「ああ、本当じゃ」

 豪が呟き、人差し指でなぞる。
 くすぐったさにぴくりと肩が跳ねて、ふふっと笑い声のような息を漏れた。

「これは生まれつき?」
「さあ」
「リボンのようにも見えますが」
「まあどっちでもええけど……」
「綺麗ですね」

 豪の言葉に瑞垣は目を瞬かせる。
 脳裡を過る声。

―――俊ちゃんの背中には、ちょうちょがおるんじゃな

―――きれいじゃなあ

 ほわほわした笑顔と口調。
 とろくささが滲み出るような。

「瑞垣さん」

 呼び掛けられて、はっとする。
 脱ぎかけのシャツを引き上げて、瑞垣は言う。

「もうええやろ」

 ボタンを留めようとする手を背後から豪が掴んで止める。
 豪の手がそのまま瑞垣のシャツを剥いで、ちょうど痣のある辺りに鼻が摺り寄せられる。

「おい、ッ!」

 ちぅと吸われる。
 唇が滑るように僅かに動いてもう一度。
 同じ行為を二三度、繰り返し、離れる唇。

「ながくらく~ん、なにしてるのかなぁ~?」
「ちょっと遊んでみたくなって」

 そう言って、豪は悪戯っぽく笑う。
 蝶の傍らにはいくつもの赤い華が散っていた。
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