「俊二さん!」
真正面から抱きつかれる。
背中に回る小さな腕。
小柄と言われる自分がこの少年と同じ年の頃は、やはりこのくらいの体格だっただろうか。
青波はこの春、高校生になる。
「あーあ、まだ俊二さんには追い付けんなぁ」
青波は溜め息混じりに言う。
「俊二さんがせめて兄ちゃんと同い年じゃったら良かったのに。5歳差は大きいね」
「ふふん、おれに追い付こうなんて100年早いで、原田弟」
瑞垣がニヤリと笑う。
それでも可愛くて仕方ないと言うように、瑞垣は彼の頭を掴んでわしわしと掻き回した。
「まあまだこれからや。身長も高校に入ってからぐんと伸びる奴もおるしな。焦らんでええんとちゃう?」
青波は唇を尖らせる。
まだまだ子どもっぽい仕草を覗かせる青波に瑞垣は思わず優しい顔になる。
素直で、けれど妙に強情なところがあって、可愛らしい。
つい甘やかしてしまいたくなってしまう。
青波は眉根を寄せて言う。
「でもそれじゃと、様にならんもん」
「さま?」
「そう」
青波は頷いて爪先立ちになり、瑞垣の唇にさっと口づけた。
瑞垣の目が大きく見開かれる。
「キスするのもこうして背伸びせんとならんし。俊二さん、ぼくな。いつか俊二さんを包み込めるくらい、大きな腕と背がほしいんじゃ」
青波はそう言って無邪気に笑う。
全く油断のならない笑みだと瑞垣の頬はうっすら赤く染まっていた。
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